■旅行日程:2015年1月10~11日(1泊2日)

イギリスにいるうちに、どうしても行っておきたかった場所があります。


イギリスに住むまでユダヤ教というものに全く縁がなく、ユダヤ教について考えることも、実際ユダヤ教の人を目にすることもなく生活してきました。

が、ヨーロッパを旅していると、色んな所でユダヤ教を意識することになります。

チェコ、プラハで訪れたユダヤ人街やシナゴーク(ユダヤ教会)、初めて目にするダビデの星。
リトアニアで知った、第2次世界大戦当時、迫害に遭うユダヤ人を救うべく政府の意向に反して「命のビザ」を発給し続けた杉原千畝さんという方の存在。


日本にいたころは第2次世界対戦というと、原爆・そして敗戦といったイメージが大きかったのですが、ヨーロッパ各地を旅することで、ホロコーストその後の冷戦といった、今までとは違ったイメージを抱くようになりました。


もっと知りたい、知らなければいけない。
そういう思いで、いつの間にか「訪れてみたいリスト」に追加されていたアウシュビッツ。

今月の初め、その思いが叶うことに。
急に決まったスケジュールのため、有名な日本人学芸員さんの中谷さんの予約は取れませんでしたが、日本語堪能なポーランド人ガイドさんと一緒に訪れてきました。



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アウシュビッツ第一強制収容所の入口ゲート。
ARBEIT MACHT FREI(働けば自由になる)という文字の下を、マーチングバンドの生BGMが流れる中毎日労働へと向かった人たちの様子が目に浮かびます。
Bの文字が反転しているのは有名。


荒涼とした施設内は個人見学は許されず、有資格学芸員さんとともにツアーで回ります。
当時は収容者のベットが立ち並んでいた建物内が、今は見学ルートとして写真などの展示物が並びます。


二度と自分の手に戻ることはないスーツケースには、手書きの名前と列車番号。
スーツケースいっぱいに、新生活に必要なものを詰めてこの地を訪れた人たち。

使い込まれた靴磨き、ところどころ間の欠けた櫛、片手鍋、子供用のぬいぐるみ…。
荷造りをする人たちの気持ちは、新生活への希望と期待に溢れていたのか、それとも「絶滅収容所」の実態を風の噂で知り、諦めと死への恐怖に怯えていたのか…。


今はショーケースに展示されている莫大な量の遺物。
そのほとんどが本当にささやかな日用品で、その遺物を通してその人達の人生が見えるようで、このコーナーを通過するときに堰を切ったように涙が溢れてきました。
今思い出すだけでも、胸が詰まります。 

 
その後訪れた、第二強制収容所ビルケナウ。
「絶滅収容所」として、他の収容所とははっきり目的の異なるこの地には、アウシュビッツの象徴とも言える鉄道引き込み線、ガス室跡があります。

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鉄道引き込み線の終着地点と、人々を乗せた貨物列車。

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「命の選別」が行われた場所。
労働不可と判断された約75%の人たちは線路左の通路へ列をなし、シャワー消毒室と称されたガス室へと続く。


あまりに有名なこの、命の選別の場に実際立ってみると、今まで写真で見てきた当時の人々の様子がはっきり浮かび上がり、今も目の前に人々が列をなしているようで…
しばらく動けませんでした。

ガス室送りとなった人たちだけが通ることを許された道を、ガイドさんに続いて歩きます。
歩いた先にはガス室跡。
破壊され建物の原型を留めないこの場所では、案内を受けないとそこがそういう場所であったことすらわかりませんが、地下室だったため地下へと通じる階段などが今も残っていました。


見学ルートが確立され、展示物を見て学ぶアウシュビッツ第一収容所。
多くの建物や施設が今は破壊され、広大な敷地を歩き感じるビルケナウ第二収容所。
 

人類の負の遺産として知られるこの遺産ですが、一部の展示品を除くと想像以上に劣化や風化が進み、覚悟していたほどの生々しさは感じませんでした。
正直、事前に本などを読んで予習しておかないと、あまりにその場で感じられることが少なく、あっけなさを感じてしまうのでは、と思えるほど。
行かれる際には事前の予習がお勧めです。


今回予習に使った本でお勧めの物がこちらの三冊。

夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録
ヴィクトール・E・フランクル
みすず書房
2014-11-07






冒頭の解説部分ではあまりに生々しい収容所内の描写に、思わず読み進める手が止まります。
痛い、恐い、寒い、辛い…読み進めるに伴い沸き起こるあらゆる負の感情を、「今の自分とは関係がないもの、だから大丈夫」と無理やり自分に言い聞かせながらでないと読み進めることができませんでした。 
これを読むのと読まなかったのとでは、現地で感じられるものに大きな差があったと思います。


アンネの日記 増補新訂版
アンネ・フランク
文藝春秋
2014-06-27


小学生のころに読んだきりの本。ほとんど内容が記憶に残っていないので改めて読んでみました。
当時の一般のユダヤ人の境遇、ユダヤ人が当時の状況をどう把握していたのかなど、当事者側の視点で物事が見えてきて勉強になります。
アンネ・フランクはアウシュビッツ強制収容所へ連行されますが、労働可能と判断されガス室行きを免れ、その後移送された別の収容所で命を落としています。

 

ここまで当日の実情を知っていくと頭から離れないのが「どうしてこのようなことが起こったのか?」という疑問。
こちらの本ではヒトラーの思想や、ユダヤ人政策の変遷、絶滅収容所へと向かうまでの経緯などが説明されています。
まず前の二冊を読み自分なりに疑問を持った上での解説本のような使い方ができ、読みやすかったです。



今日はアウシュビッツ強制収容所が開放されて、ちょうど70周年だそうです。
現地では追悼式典が催され、BBCでも式典の様子の生中継、特別番組が流れています。

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1月上旬に訪れた際には、式典のためのアーチが建設途中でした。

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ポーランド人通訳さんによると、男性だけでなく女性も徴兵の義務のあるイスラエルの若者たちは、アウシュビッツを訪れてから兵役に入るのだそうです。


二度とこのような悲劇が起こりませんように。
犠牲者の方々のご冥福をお祈り申し上げます。 


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